「犬ヶ島」は、「グランド・ブダペスト・ホテル」のウェス・アンダーソン監督が構想から6年、20年後の日本を舞台に”犬インフルエンザ”により飼い犬たちが、犬ヶ島という孤島に島流しになる。愛犬を捜す12歳の少年アタリと犬たちの冒険を描いたストップモーションアニメ。
目次
犬ヶ島のあらすじ
いまから20年後の日本。ウニ県メガ崎市では“ドッグ病”が大流行し、人間への感染を恐れた小林市長は、野良犬も飼い犬もすべての犬をゴミ処理場の島“犬ヶ島”に追放すると宣言。科学者である渡辺教授は、この病気を治す血清がじきに完成すると主張するが小林市長はそれを無視。賛成派を団結させるため、補佐のメイジャー・ドウモを呼び、まずは市長宅の護衛犬スポッツを島に送り込むよう命じたのだった。
数か月後。隔離された離島“犬ヶ島”にゴミと一緒に捨てられた犬たちは、怒りと悲しみと空腹を抱えさまよっていた。その中に5匹のグループがいた。かつては快適な家の中で飼われていたレックス、22本のドックフードのCMに出演したキング、高校野球で最強チームのマスコット犬だったデューク。そんな元ペットの4匹に、強く生きろと喝を入れるのが、野良犬だったチーフ。
そんなある日、低空飛行していた小型機が犬ヶ島にかろうじて降り立ち、煙を上げる機体の中から現れたのは、一人の少年であった。彼は市長の養子の小林アタリ。愛犬であり親友のスポッツを救うため、たった一人で犬ヶ島にやってきたのだ。
新幹線事故で両親を亡くしてひとりぼっちになり、遠縁の伯父である小林市長に引き取られた。そして、12歳のアタリにとって「あなたの安全を末永く守ります。」と誓ってくれた護衛犬スポッツだけが、心を許せる親友であった。
犬ヶ島で出会った勇敢で心優しい5匹の犬たちを新たな相棒とし、愛犬スポッツを探索する旅に出るのだが彼らに大きな試練が待っていた。
犬ヶ島のキャスト
コーユー・ランキン(小林アタリ)、リーヴ・シュレイバー(スポッツ)、ブライアン・クランストン(チーフ)、エドワード・ノートン(レックス)、ボブ・バラバン(キング)、ビル・マーレイ(ボス)、ジェフ・ゴールドブラム(デューク)、(ナツメグ)スカーレット・ヨハンソン、F・マーリー・エイブラハム(ジュピター)、ティルダ・スウィントン(オラクル)
野村訓市(小林市長)、高山明(メイジャー・ドウモ)、伊藤晃(渡辺教授)、オノ・ヨーコ(科学者助手ヨーコ・オノ)、グレタ・ガーウィグ(トレイシー・ウォーカー)、村上虹郎(ヒロシ編集員)、フランシス・マクドーマンド(通訳ネルソン)、野田洋次郎(ニュースキャスター)、渡辺謙(筆頭執刀医)、夏木マリ(おばさん)
ハーヴェイ・カイテル(ゴンド)、フィッシャー・スティーヴンス(スクラップ)、コートニー・B・ヴァンス(ナレーター)
ウェス・アンダーソン監督
ウェス・アンダーソン
1969年生まれ、米国テキサス州出身。「アンソニーのハッピー・モーテル」(96)で長編映画監督デビュー。「天才マックスの世界」(98)でインディペンデント・スピリッツ賞監督賞を受賞。
初のストップモーションアニメーション「ファンタスティックMr.FOX」(09)がアカデミー賞長編アニメ賞にノミネート。「ムーン・ライズ・キングダム」(12)、「グランド・ブダペスト・ホテル」(14)が各国で大ヒットを記録、アカデミー賞9部門にノミネートされ、ゴールデングローブ賞作品賞に輝く。
「犬ヶ島」(18)で第68回ベルリン国際映画祭のオープニング作品として上映され、コンペティション部門で監督賞(銀熊賞)を受賞。
犬ヶ島 エピソード
その昔、犬を崇拝していた2つの族と猫を崇拝していた小林一族がいた。あるとき、この3つの族が争いを始め、コバヤシ一族は敗戦した。
小林家と犬の因縁
いまから千年ほど前の“服従時代”以前
犬たちは自由にマーキングをし勢力を拡大していた
猫を愛する小林王朝は宣戦 挙兵して無防備な犬たちを襲った
いよいよイヌ科全滅という前夜-
ある少年侍が負け犬の犬たちに同情
人間を裏切り王朝の頭の頭を断頭
雄叫びを俳句にして刀に誓った
人間に 我背を向ける 窓の霜
彼こそが伝説の少年侍だ 安らかに眠れ
残忍な戦が終わり 服従させられた犬たちは力なくペット化
飼い馴らされ 奉仕し 軽んじられた
その一方 生き延び 繁殖もした
だが 小林家は断じて 旧敵を許さなかった
犬ヶ島のレビュー
ウェス・アンダーソン監督の2作目のストップモーションアニメ。構想から6年、14万4000枚もの写真をコマ撮りして、撮影に445日、総勢670人のスタッフで作成された「犬ヶ島」。
20年後の日本が舞台とあるが、昭和感が漂う。冒頭に太鼓の音から始まり、相撲、浮世絵、俳句、寿司、着物といった日本の文化が散りばめられており、とても丁寧に作られているのには驚いた。50~60年代の日本映画、黒澤明監督の影響を大きく受けているらしい。音楽にも「七人の侍」の曲がそのまま使われているほど!全く違和感なく新しい感覚にも思えた。映画に出てくる小林市長は、三船敏郎がオマージュされているらしい。
ただ、犬は英語で話し、人間は日本語、ナレーターは英語と聞いたり読んだり忙しい。しかも、映像には日本語のポスターや看板などが出てくるので情報が多く瞬きするのが惜しいくらい。観ていて疲れたが、ウェス・アンダーソンの世界に酔いしれた。
評価
「犬ヶ島」
評価 ★4.5点