「塩田千春展:魂がふるえる」が森美術館で開催していたので、行って来ました。塩田千春さんは、ベルリンを拠点にグローバルに活躍しているアーティストです。今回の展示では、彼女の25年にわたる活動を網羅的に体験できる過去最大規模の個展で、ダイナミックなインスタレーションは圧巻です。
目次
映画「サスペリア」と塩田千春さん
先日、2019年1月上映の映画「サスペリア」を鑑賞しました。この映画は、1977年にイタリアの鬼才ダリオ・アルジェント監督が製作したゴシックホラーの金字塔「サスペリア」のリメイクで、どこかの記事にこの映画の製作で影響を受けたアーティストとして、塩田千春さんが紹介されていました。独特な世界観があり興味を持った映画でしたので、日本人である塩田千春さんというアーティストを調べると、ちょうど森美術館で展示会を開催していたので、足を運びました。衣装にも塩田千春の世界観が伝わってきました。

塩田千春展:魂がふるえる「不確かな旅」
会場に入って、ひとつ目のインスタレーション《不確かな旅》のダイナミックな空間には圧倒されます。天井から真っ赤な糸で覆われ、床にはいくつかのフレームだけの舟が配され、無数の赤い糸で繋がっています。この赤い糸は、不確かな旅の先にある多くの出会いを意味しているのでしょうか。そして、作者はこの「舟」というモチーフについては、「孤独だが宇宙の中にいる。ある方向に向いて前に進んでいる(しかし振り向けば死が待っている)ということを示しています」と語っています。

塩田千春展:魂がふるえる「静けさの中で」
次のインスタレーションは《静けさの中で》というタイトルで、焼けたピアノ、焼けた椅子が黒い毛糸で覆われいます。これは塩田千春さんが幼少期に、隣家が夜中に火事で燃えた記憶から制作されたそうです。赤い糸ではなく、黒い糸にすることでより燃えた跡の静けさを感じられるような空間になっていました。経験したインスピレーションを元に、このような作品を創り上げるとは、豊かな発想力ですね。

塩田千春展:魂がふるえる「時空の反射」
その隣に《時空の反射》というタイトルの鉄枠に囲まれた空間を半分に仕切られ鏡の両側に白いドレスが吊られています。そして、これでもかというほどの黒い糸で覆われていて、横に立つともう一人の自分が映り、ドレスは2着吊るされているのか、それとも反射なのかと不思議に感じた空間になっています。

塩田千春展:魂がふるえる 集積-目的地を求めて
最後のインスタレーション《集積―目的地を求めて》は、約430個のスーツケースが天井から赤い糸で吊るされ、いくつかのスーツケースが振動し続けています。この作品は、塩田千春さんがベルリンの蚤の市で見つけたスーツケースの中に、古い新聞を発見したことをきっかけに制作されたそうです。

展示会場を最後まで見終わった後、壁に書かれていた作者の言葉を思い返しました。
糸はもつれ、絡まり、切れ、解ける。
それは、まるで人間関係を表すように、私の心をいつも映し出す。- 塩田千春
生きることの意味や人生の旅路、魂について、改めて立ち止まって考える時間を与えられた気がしました。
塩田千春とは
塩田千春プロフィール
1972年大阪生まれ、ベルリン在住。2008年、芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。南オーストラリア美術館(2018年)、ヨークシャー彫刻公園(2018年)、スミソニアン博物館アーサー・M・サックラー・ギャラリー(2014年)、高知県立美術館(2013年)、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(2012年)、国立国際美術館(2008年)を含む世界各地での個展のほか、シドニー・ビエンナーレ(2016年)、キエフ国際現代美術ビエンナーレ(2012年)、横浜トリエンナーレ(2001年)など国際展参加も多数。2015年には第56回べネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館代表。
Information
塩田千春展:魂がふるえる
会期:2019年6月20日~10月27日
会場:森美術館
住所:東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53階
電話番号:03-5777-8600
開館時間:10:00~22:00(火 〜17:00) ※入館は閉館の30分前まで
休館日:会期中無休
料金:一般 1800円 / 65歳以上 1500円 / 高校・大学生 1200円 / 4歳~中学生 600円