「アンダー・ザ・シルバーレイク」は、「イット・フォローズ」で世界的に注目を集めたデヴィッド・ロバート・ミッチェル監督の新作映画。恋に落ちた美女の突然の失踪。オタク青年サムは暗号解読、都市伝説、サブリミナルの知識を活かし、シルバーレイクの下にうごめく闇に迫る。
目次
「アンダーザシルバーレイク」のあらすじ
“大物”になる夢を抱き続け、気づけば職もなく、家賃まで滞納しているサム。ある日、隣に住む美女サラに一目惚れし、何とかデートの約束を取り付けるが翌日、彼女は忽然と消えてしまう。もぬけの殻になった部屋を訪ね、部屋の壁に書かれた奇妙な記号に陰謀の匂いをかぎ取る。
その頃、L.A.の街では大富豪や映画プロデューサーらの失踪や謎の死が相次ぎ、夜中に犬殺しが出没し、街を操る謎の裏組織の存在が噂されていた。サムは、暗号解読、都市伝説、サブリミナルメッセージなどを追ううちに、いつしか街の裏側に潜む陰謀に巻き込まれていく。
「アンダーザシルバーレイク」のネタバレ
「アンダーザシルバーレイク」のネタバレとなります。「サムの過ごした奇妙な6日間」について、細かく書きました。かなり長文となっていますが、1回観ただけではなかなか理解できない部分など、ぜひこちらでチェックしてみてください。
1日目◇◇サム、恋に落ちる
LAのシルバーレイクに暮らす33歳のサム。アパートのドアには「家賃滞納。5日以内に払わないなら退去」という通知が貼られていた。それを剥がし、ベランダから双眼鏡でアパートの他の部屋を覗いていると、母親から電話が鳴る。仕事中と嘘をつき、電話を切る。プールサイドに犬とビキニ姿のサラという美女に見とれていると、ガールフレンドがランチに訪ねてくる。
サムが一人本屋から帰ると、サラの玄関先に彼女の愛犬を見つけ、犬用ビスケットをあげていると、それを見たサラから部屋に誘われる。彼女の部屋で「百万長者と結婚する方法」を鑑賞。自然といいムードになったところに、ルームメイトと海賊のファッションをした友人が帰宅する。
サラから、「明日の午後にまた来て」と告げられ、玄関先に出ると、突然花火が上がった。なぜこの時期に花火が上がるのか、少し疑問に思ったが、サムは渋々家路につくと、子供たちがサムの愛車のマスタングにいたずらをしているのを見つけ、その子供たちを容赦なくボコボコにする。
帰宅後、TVをつけると大富豪ジェファソン・セヴンスの失踪事件が報じられていた。最近セレブの不可解な死が続き、夜中には犬殺しが出没。街に流れる不穏な空気を感じつつ、本屋で買った同人誌「シルバーレイクの下に(Under The Silver Lake)」を読みふける。
2日目◇◇サラの突然の失踪
翌日、サラの家を訪ねると、夜逃げしたかのように空っぽになっていた。やがて若い女が一人現れ、サラの忘れ物を取り出て行った。壁に書かれた不可解な記号に陰謀の影を察知し、女の後をつける。すると、昨日サラの家で見た海賊ファッションの男が忘れ物を受け取って走り去る。
さらに女を追うと、人気バンド“イエスとドラキュラの花嫁たち”の屋上ライブに辿り着く。女をトイレまで追いかけ、サラの居場所を尋ねるが無言で股間を蹴り上げられ、捜査はここで中断。帰宅中、怪しい人影を感じ逃げ、散々な一日のとどめに家の前の茂みでスカンクに分泌液をかけられる。
帰宅してTVをつけると、車ごと焼かれたジェファソン・セヴンスの遺体が見つかったというニュースが流れていた。その直後、サムは衝撃の事実を目の当たりにする。「女性3人の遺体も」というアナウンスと共に映し出されたのは、なんとサラがかぶっていた帽子だったのだ。
その後、ガールフレンドがアパートに訪れる。体に付いてしまったスカンクの強烈な悪臭を消すため、トマトジュース風呂に浸かりながら、ガールフレンドに陰謀論をアツく熱弁するも、あまり理解してもらえなかった。そして、彼女が帰った後、プールで泳ぐサラの幻を見るのだった。
3日目◇◇不可解な記号の解読
何かの陰謀だと感じたサムは、解明するため同人誌「シルバーレイクの下に」の作者に連絡をとり、彼の自宅に会いに行く。そして、サラの部屋の壁に書かれた不可解な記号について聞くと、サム以上に陰謀・暗号オタクの彼は、記号を解き明かし、ホーボーの暗号だと指摘する。
ホーボーとは、20世紀初頭の大恐慌時代、汽車にタダ乗りしながらアメリカ中を渡り歩いた放浪者のことだと説明される。さらに、この街のすべての事件にカルト集団の“フクロウのキス”が関係しており、紙幣に小さくフクロウが描かれ、“フクロウのキス”による支配説だと言う。
記号の意味は解明できたが、謎は深まるばかりだった。その後、飲み友達とドローンカメラで覗き見しながら、語り合う。そして、サムは“イエスとドラキュラの花嫁たち”のメンバーのソロライブに出かける。会場の墓地では、映画も上映され、後ろに出演女優を見つけ、話しかける。
ライブ会場で友人のアレンから、“イエスとドラキュラの花嫁たち”の曲の中にメッセージが隠されていると教えられる。その直後、目に入ってきたのは、昨日のライブで見かけた風船のパフォーマンスをしていた女の子。彼女にメッセージのことを聞くと「事実とは違う」と否定される。
そして、風船のパフォーマンスの彼女と盛り上がり踊っていると、突然、気分が悪くなり頭がクラクラしてくる。ちょうどその時、昨日追っていた女を見つけ、追いかけようとするも途中で気を失ってしまうのだった。
4日目◇◇イエスとドラキュラの花嫁たちの暗号を解読
電話が鳴り目を覚ますと、母親からの電話で、母親が好きなジャネット・ゲイナーの話をしてくる。そして、あたりを見回すとそこはジャネット・ゲイナーの墓の前だった。サムは家に帰り、“イエスとドラキュラの花嫁たち”のヒット曲「回る歯」を繰り返し聞いて、暗号解読をする。
謎が解けず、疲れきった頭で雑誌を眺めていると、女の子を派遣するエスコートサービス“シューティング・スター”の広告を見つけ、そこに見覚えのある顔に気づく。昨日、墓地で後ろにいた女優だ。そして、彼女と一緒にいた男が、例の海賊ファッションの男だったと思い出す。
サムはすぐに電話をかけ、彼女を指名。早速やってきた女に、海賊ファッションの男のことを聞くが何も知らないと言い、サラの写真を見ると、2年前のあるパーティで彼女を見かけたと話す。LAの屋敷で開かれた豪華なパーティで、持ち主は超売れっ子ソングライターだったという。
そして、敷地内にあった一帯で最も大きな邸宅だけは、なぜか立ち入り禁止だったと女は話し、振り返る。サムは、超売れっ子のソングライターと立ち入り禁止の大きな邸宅をヒントに、再び解読に挑む。
5日目◇◇ホームレスの王との出会い
ついに暗号を解いたサムは、早速メッセージに従い進むと、“ホームレスの王”と名乗る男が現れる。そして、サムを洞窟の入り口へと導き、薄暗いトンネルを進むとドアがあり、その奥は広大な防空壕にたどり着く。その後すぐに、同人誌の男に意見を聞こうと彼の家を訪ねる。
同人誌の男の自宅に着くと、パトカーが停まっており、警官から彼は自殺したと告げられる。サムはこっそり部屋に忍び込み、防犯カメラの録画を見ると、そこには彼が恐れていたフクロウの仮面の女“フクロウのキス”が映っている。男の話は半信半疑だったサムだが、陰謀を確信する。
その後、“イエスとドラキュラの花嫁たち”に会うため業界人の集まるパーティに行く。そして、暗号の意図を“イエス”に問い詰めると、「作者はソングライターだ」と告白。サムがソングライターの屋敷に乗り込むと、彼は歴史上のほとんどのヒット曲の真の作者は自分だと嘲笑う。
さらに、ソングライターの男は、拳銃をサムに向ける。そして、容赦なく発泡してきたため、混乱したサムは、近くにあったカート・コバーンが愛用していたギター“ムスタング”を手に取り、思いっきり振りかざす。無我夢中になり気づくと、ソングライターの男を殴り殺していた。
その夜、野良犬を追って辿り着いたパーティ会場で、サムは大富豪の娘ミリセント・セヴンスと出会う。二人は意気投合し、会場を出る。貯水池で、亡き父のブレスレットをサムに渡した直後、彼女は何者かに射殺される。ブレスレットには、アルファベットと数字の暗号が刻まれていた。
6日目◇◇サラに再会!?
翌日、ブレスレットに刻まれたアルファベットと数字を解読し、ついにその暗号が任天堂のゼルダの伝説の地図に繋がることを突き止める。そして、地図が指し示すマウント・ハリウッドに到着すると、一つの小屋を見つける。中を覗くと一人の男と3人の女性がくつろいでいた。
サラは、ジェファソン・セヴンスと一緒に地下の部屋で、別の世界へと上昇するのを待っていると男から教えられる。サラとジェファソンは、ニュースで亡くなったと報道されたが、実は生きていたのだ。そして、ビデオ電話ならサラと話せると言われ、サムはサラに電話をする。
「間違っていたと思う?」とサラに聞かれ、「うん多分ね」とサムは答える。すると「もう出られないから、生きる日々を楽しむ」と彼女は微笑みながら、一筋の涙をぬぐう。そして、サムは小屋を去ろうとして意識を失う。気がつくとサムはホームレスの王に拘束されていた。
ホームレスの王に、「このことを誰にも話すな」と固く口止めされ、解放を許される。自宅に帰宅すると、母から送られてきたジャネット・ゲイナーのビデオを見ながら、サラを静かに偲ぶ。そして、退去期限が過ぎたサムの部屋の壁には、ホーボーの暗号が記されていた。
「アンダーザシルバーレイク」のキャスト
アンドリュー・ガーフィールド、ライリー・キーオ、トファー・グレイス、ゾーシャ・マメット、キャリー・ヘルナンデス、パトリック・フィッシュラー、グレース・ヴァン・パットン、ジミ・シンプソンほか
デヴィッド・ロバート・ミッチェル監督
デヴィッド・ロバート・ミッチェル
1974年生まれ、米ミシガン州デトロイト出身。現在はロサンゼルス在住。「Virgin(原題)」(02)で短編映画監督・脚本家デビュー。長編1作目の「アメリカン・スリープオーバー」(10)がサウス・バイ・サウスウエストでプレミア上映され、審査員特別賞を受賞。
長編2作目のホラー映画「イット・フォローズ」(14)では、カンヌ国際映画祭国際批評家週間でプレミア上映され、映画批評サイト「ロッテントマト」で驚異の96%をたたきだす。辛口批評家から絶賛され、全米4館上映が1600館で拡大上映となり、世界的大ヒットを記録。
本作長編3作目のサスペンス映画「アンダー・ザ・シルバーレイク」(18)では、幻想的な映像で斬新な世界観を構築し、カンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品された。
「アンダーザシルバーレイク」レビュー
この映画は、はじめはサスペンス映画かラブコメなのかはわからないが、アートや音楽、ファッション性を強く感じ、映画館で鑑賞しました。主演のアンドリュー・ガーフィールドもアメイジングスパイダーマンシリーズで観ていたので、注目していた俳優でもあり興味が湧きました。
映画を鑑賞する前と鑑賞した後とでは、全く印象が変わり、鑑賞後デヴィッド・ロバート・ミッチェル監督のファンになってしまいました。突然失踪した美女を捜しながら、謎に包まれた暗号を解読したり、都市伝説やサブリミナルメッセージ、不思議な世界観な映画。
一言でいえば、オタク色の濃い映画。おそらく好きか嫌いか分かれる作品なのだと思います。謎があちらこちらにあり、それを解くのがとても楽しく、何回も同じ映画を観る人間ではないのですが、「アンダー・ザ・シルバーレイク」は、もう一度観たい映画です。
この映画のみどころは、過去の名作映画へのオマージュが満載。ヒッチコック監督やデビッドリンチ監督の作品や夜のプールサイドで泳ぐサムが幻を見るあのシーンは、マリリンモンローの「女房は生きていた」という映画のワンシーンだそうです。
日本のゲーム「ゼルダの伝説」が、とても重要な最後の謎解きでが使われています。ゼルダの伝説は、囚われたお姫様ゼルダを救うため、様々な迷宮を攻略し、最後はラスボスの待つ迷宮に挑むアクションアドベンチャーゲーム。サムが自宅で友人とスーパーマリオをしているシーンがあり、何だか新鮮でした。
そして、もう一つの重要なキーワードとなったのは、90年代のクールなロックの楽曲が登場します。ニルヴァーナをはじめとするオルタナティブロックを中心に、いたるところに重要な暗号が散りばめられた作品です。ニルヴァーナでもう一つ、ポスターの写真もニルヴァーナのセカンドアルバム「ネバーマインド」のジャケット写真のオマージュだったのだと謎が解けます。
さらに、ポスターの水面下に浮かぶ水疱をよく見ると、ヒントになった人や物が隠されています。言われなければ、全く気がつかない。下側の木の間にも実は、人の顔が隠されています。これはおそらくサムでしょうか。本当に言われなければ、気がつかないのですが、見つけたときには思わず感動!
個人的に気になったのは、サラの部屋のテレビの横にあった3体の人形です。これは何の謎解きなのだろう?と思いましたが、映画が終わると特に関係はありませんでした。けど、とても気になり調べると、サラの好きなマリリンモンローが出演している映画「百万長者と結婚する方法」の3人組のフィギュアだということがわかりました。
最後に公開について、2018年5月15日に第71回カンヌ国際映画祭でプレミア上映され、当初翌月6月22日に全米公開予定でしたが、カンヌでの評価が思わしくなかったのを受け、再編集し全米より先に日本で10月13日から公開されました。ちなみに全米での公開は、2018年12月7日スタート予定だそうで、反応が楽しみです。
まだ、都内で上映しているので、もう一度映画館で観たいと思います。最後までお読みいただき、ありがとうございました!
「アンダーザシルバーレイク」の評価
アンダー・ザ・シルバーレイク
評価★4.8点